和の学校

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つくものらぼ 「実施レポート」


9月2〜4、6日の4日間にわたり、京都市立 乾隆幼稚園において津田純佳さんによる「つくものらぼ」を実施しました。以下、その実施レポートを掲載します。

■ 3・4歳児さん は 指物の端材・余材 を使って
3、4歳児さんたちを対象とする「つくものらぼ」で選ばれた素材は、指物師・川本光春さんからご提供いただいた木の素材。指物の制作段階で発生した端材・余材です。素材の中には、透かしを施すために切り抜かれたものもあって、まさに本物の一部であることがうかがえます。

指物の端材・余材がテーブルに並ぶ様子


「なにが始まるんだろう?」とやってきた子どもたち。

いつもとは違う様子にとまどいながらも、アトリエリスタの津田さんのことばや表情に興味津々です。まずはひとりひとりに接ぎ木細工された木の棒が手渡され、触って不思議そうに見たり、机を叩いて音を聞いてみたり、匂いをかいでみたり…と、五感を通して素材を感じていました👏

いつも遊んでいるブロックや積み木とはぜんぜん違う、不揃いで不思議な形。机に並べたり、下から光を当ててみたり。素材に触れながらそれぞれが「気になる木」を見つけ出すと、自分で選んだ木片を前にして木と木を並べてみる、重ねてみる…など、組み合わせながらあそび始めます。


津田さんは、決して方向を示したり、誘導したりすることはなく、子どもたちの声をたくさん拾い上げて自発的な創造性を引き出します。そんな中、誰かが「こうえん(公園)をつくりたい!」と声を上げました。

最終的には、それぞれがつくった作品をつなげて関係をむすび、たくさんの物語が紡がれた公園のジオラマのような作品が出来上がりました✨

■ 年長組さん は 唐紙の端材・余材 を使って


年長組さん(5.6歳児)で選ばれた素材は、表具全般を手掛ける「静好堂中島」さんよりご提供いただいた紙(唐紙)です。子どもたちがふだん慣れ親しんでいる紙といえば薄くて平べったいものですが、今回の紙はすべて丸まっています。アトリエリスタの津田さんから「好きなものをえらんでいいよ」と言われると、まずは筒状になった紙を望遠鏡のように覗き込みはじめました。

津田さんが、波の描かれた襖紙の一部を見せると、子どもたちから「うみ!」「なみ!」と勘のいい回答のほか、「やま!」という子がいて、周りの大人も妙に納得。それを受けた別の子が「大をかいたら だいもんじ!」とすかさず発言。さすが京都育ち…!

床に張り付いて広がったそれぞれが選んだ唐紙を眺めて、いろんな探究が始まると思いきや、誰かが「みずをかけたい!」と言い出しました。端材とは言え、唐紙に水をかけるという発想は大人にはありません。どうなるのだろう、と思っていると津田さんが「じゃあ、やってみよう」とみんなに同意。これが本来の在り方だとは思いながらも、まさかの展開になりました。

すぐにバケツに水を汲み、たっぷりと水を吸った筆で唐紙の柄をこすっていくと…、「きえた きえた!」と、柄が無くなることへの驚きの声があがりました。みんなの予想では「かみがやぶれる」とのことでしたが、和紙の強さに感心したようで、水たまりができた紙をそのままに、次の日にどうなっているか確かめることになりました。次の日、紙は破れることも無く、紙には自分たちの筆跡がしっかり模様として残っていました。

子どもたちは、いつもお絵描きしているようなサイズとは違うキャンバスを前にして、何かを描きたくなったようで、用意された長い和紙に絵具を用いて手でぬたくりしたり、筆を使って手元で何かを描いてみたり。

最後に、実際の唐紙をキャンバスとして、その模様の姿かたちから、そこに描かれている意味や物語をそれぞれが読み取り、感じ取り、すでにある模様に何かを描きこんで物語の続きを綴ります。余材や端材であった紙に、子どもたちの創造的なエネルギーが加えられました。

使用した素材は、「木工端材」(提供:川本光春)と「唐紙・和紙」(提供:静好堂中島)です。

 指物を制作するにあたって発生した端材・余材がテーブルに並ぶ様子
素材提供:川本光春
京表具に用いる唐紙や和紙を用いた「つくものらぼ」実施途中の様子
素材提供:静好堂中島

これらのプロセスは、12月6〜8日にかけて開催予定の「和の学校文化祭」でも展示等のかたちでご紹介させて頂く予定です。子どもたちのワクワクした気持ちに共感しながら、準備を進めていきたいと思います!

写真提供/みりおらーれ